2020年10月19日
近年、世界的に脚光を浴びている“アドベンチャー・ツーリズム”
シアトルに本部を置き、世界100ケ国、1300会員からなる“アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)という組織もあるほど、ツーリズム界では、特筆される分野。北海道は、その中でも特に注目されている地域だ。
本格的な紅葉には少し時期が早かったが、阿寒湖周辺を歩いてきた。
ベースとなるのは、阿寒湖温泉の中心地にある「鶴雅リゾート」。
迷うほど数多く用意されたアドベンチャーアクティビティ・プログラムの中から、今回は「森を楽しむトレッキング」を選択してみた。
一般人は足を踏み込めない森に、特別許可を持っているガイドの高田さんと共に150年以上前からこの森の自然を守っていかなければいけないと前田氏によって自然保存を続けている“光の森”を歩くプランだ。
この森は阿寒の自然を守る「前田一歩園財団」により維持されているとのこと。
“光の森”の由来は、ほとんど手をいれていない森にもかかわらず、
自然の光が隅々まで入りこむ森なので、この様に呼ばれているらしい。
森を歩き出して間もなく、高田さんから“ブラックフォーレスを体験したことありますか?”とアイマスクを渡されながら、“太陽の微かな明かりを感じ、五感を研ぎ澄ませて、いま立っている所で360度回ってみて下さい”と言われた。
さっそくアイマスクをつけて、その場でひとまわり。
自分では360度回ったつもりだが、実際には360度を大きく行き過ぎていた。
自然界から離れた日常生活をおくっていると、このようになるらしい。
その後、アイマスクを付けたまま、高田さんの声と自然の音だけを頼りに前へ進む。
これもなかなか難しい。自然界に生活する動物ならこのような状態でも普通に進めるとのこと。日常において、いかに自然からかけ離れた世界で生きているかを思い知らされた。
アイマスクを取ったあと、森を進んでいくと、紅葉も始まっていて、枯れ葉が自然とゆらゆらと舞い落ちる光景にさえ、とても心が洗われた。
さらに進むと、阿寒の川の源流に出会った。岩の間から、かすかに染み出るような水。
自分が今、目にしている水は100年前の雨や雪などが岩でろ過させて湧き出てくるものだと、説明を受ける。ホテルの温泉大浴場などで見かけたミネラルウォーターには、“くしろ阿寒百年水”と名つけられていたのを思い出した。
高田さんが湧き水のまわりの岩を寄せると、そこには10センチほどのザリガニがいた。
これが成長して、川を下り阿寒湖のザリガニとなっている。
そう言えば、このあたりで、熊がザリガニを咥えている彫刻をよく見かけた。
さらに落ち葉を踏みしめて森の奥に進む。
高田さんが赤い実を見つけて差し出し、かじってみて下さいと。
胡椒のようなピリッとした柑橘系の味。ほおずきにも似たような味だった。
これは、“シケレベ”という木の実で、アイヌの人達はこれを乾燥させてお茶として飲んでいたとの事。今も町中でお茶として出している所もあるようだ。
このあたりの森は、エゾ松とトド松、ポプラなどが多い。エゾ松の葉は、柔らかく古来からハーブとしても使われていて、トド松は、葉も固く香りもきつい。甘い香りがするのは、ポプラの木。
エゾ松の幹を見ると無数の蝉のぬけがらがついていた。北海道の蝉は、体調も小さいし、鳴き声も本州に比べたらかなり静からしい。(もう蝉の季節ではないので、蝉の鳴き声を聞いたわけではないが)
笹の葉などを踏み分けて進むと、なんとなく硫黄のにおいがしてくる。
ここが、阿寒温泉の源泉。
今まで歩いてきた風景から一転、赤や黄色の鮮やかな所にでる。木々の種類も少し変わって楓などの落葉樹の森だ。
紅葉が始まって太陽の陽が差し込み、艶やかな空間を演出している。
高田さんが用意してくれたコーヒーを味わいながら自然の中でゆっくり休息。
約3時間の森のハイキングだったが、聞こえてくるのは自然界の音だけ。
何も手入れをしていない自然の中のハイキングは身も心もリフレッシュできるひと時だった。人工物のない世界、今の時代、是非、北海道の自然の中を歩くことをお勧めする。
宿について一言。
今回は、“あかん遊久の里・鶴雅”(別館)の滞在にした。阿寒湖に面して建ち、温泉、環境は素晴らしい。別館は、部屋も広く、部屋からは湖を正面し、設備もしっかりしてとても良い。但し、食事はもう少し改良が必要かと思った。
部屋の確保できるのであれば、“あかん鶴雅別荘鄙の座”がお薦である。
<阿寒摩周国立公園を訪れるモデルプラン>